INTERVIEW

2021.03.25UP|インタビュー

堆肥づくり スタッフインタビュー

日根野にある泉州アグリの事務所から車で約30分。山に囲まれた静かな場所に、堆肥作りの工場があります。堆肥作りは華やかなものではないけれど、野菜にとって、とても大切なもの。今回は泉州アグリの加藤さんにお話を伺ってきました。

堆肥づくりの工場。周辺には緑が多く、気持ちがいい場所。堆肥づくりの工場。周辺には緑が多く、気持ちがいい場所。

まずはじめに、堆肥とはどういったものでしょうか。

土を元気にするものですね。肥料と堆肥ってちょっと違ってて。肥料は、その時必要な養分を補うもの。堆肥は土を元気に、自然界により近いものに持っていくみたいなスタンスです。
世の中の農業って、どうしても化成肥料寄りなんです。土の循環システムに科学的な要素を盛り込んで、自然の循環システムに横槍を入れている。

それは好ましくないことなんですか?

化成肥料ばっかり使ってると土が痩せていくって農家さん達も言うんですよ。土が痩せるって言い方、すごい上手やなって思ってて。まさしく土の中の成分値がすごく変わってきて、化成肥料を入れないともうできなくなるというか。
それって野菜にとってどうなのかって言われたら、たぶん違うよねって思ってて。だから、やっぱり農業をやる以上、土を作るところから自分達でやりたいよなって。

お話を伺った加藤さんお話を伺った加藤さん

堆肥づくりはいつからされてるんですか?

もう五年くらいかな。もともとここは僕らが作った工場ではなくて、廃業される土屋さんがいて、工場をそのまま借り受けできたんです。
農業ってすごい波があるし、大きな利益が出るような職域じゃない。その中で従業員抱えてやる以上は、リスクの分担というか、農業が暇な時にできる仕事を作っていかないと、やっぱ回っていかへん。その中で、どうせやるんであれば、農業に付随した形の仕事をやりたいよねっていうのと、自分たちが野菜を作るために必要な堆肥を作りたいって想いがずっとあって。そんな時に、ここの工場を借りることができて、思い切ってやろうっていう話になったんです。それでまず商品化したのが、この「泉州バーク堆肥」。

泉州バーク堆肥。ロゴは土が循環する様子を表しています。泉州バーク堆肥。ロゴは土が循環する様子を表している。

堆肥って作ろうと思って作れるものなんですか?

あーでもないこーでもないとか言いながら…結構苦労しました。泉州バーク堆肥を作って商品化するのに、半年以上は時間かかってますね。自分で使う分の堆肥を製造されてる農家さんはいるんですけど、販売までやってる人はいないと思う。

そんな中、商品化して販売まで行なっている理由を教えてください。

工場を借りられたってこともありますけど、農家さんに堆肥を活用してもらいたいっていうのもある。というのは、色々な農家さんと話をしてると、堆肥は撒きたいけど、その労力がないって言うんです。重たいから。大阪は農家さんの高齢率が他の都道府県に比べても一番高くて、だいたい平均して60代とか70代やっていうのもあって。だから、撒くところまでやってくれるんやったら買いたいねんっていう方が割といたんです。

確かにこれも一袋17kg…重たいですもんね。

いい野菜を作りたいっていう想いはみんな同じやと思うんです。だから堆肥を作って、それを撒くところまで僕たちで担ってあげられたら、農家さんが堆肥を入れられたり、農業を続けられたりだとか…そういう部分に若い力が入り込むことで、いい状況って作れるんちゃうかなって思うんです。
ただ堆肥を売るだけで終わってしまったら、たぶん僕らがやる意味はないだろうし。堆肥を撒くところまでを仕事化して、若い子たちの就労支援の中でやっていけば、仕事づくりにもなってくんかなって思う。

工場内には堆肥の材料がたくさん積まれている。工場内には堆肥の材料がたくさん積まれている。

この泉州バーク堆肥は、どのように作るんですか?

ウッドチップ(木の切り屑)と、牛糞を混ぜ合わせて水をかける。そしたら腐ってきますよね。それで醗酵してくる。醗酵を何回も繰り返しながら、定期的にかき混ぜながら作るって感じですね。半年以上はかかります。和歌山の方でかき混ぜる作業をしていて、8割方できた段階でこっちに持って来てます。

この堆肥の特徴はどんなところでしょう。

木の色ってもともとは茶色ですが、うちの堆肥は真っ黒なんですよ。これは発酵してるからなんです。完熟まで発酵させる。なんでかって言うと、都市型農業ってビニールハウスが多い。ビニールハウスに堆肥を撒いた時に、醗酵してない状態の堆肥を入れてしまうとガスが発生するんですね。そのガスがハウスの中で充満するとすごく良くない。だから半年以上、定期的にかき混ぜながら、完全にガスが出ない状態にしたものを商品化するっていうスタンスにはしてます。

発酵しているため、かき混ぜると湯気が出る。発酵しているため、かき混ぜると湯気が出る。

泉州バーク堆肥以外にも商品はありますか?

今はあと2つあります。1つはプランター用の「花と野菜の土」。花もいけるし、野菜もいける、家庭菜園で使う土ですね。もう1つはイチゴ農家さんのための「イチゴの土」。イチゴ専用の土です。これは最近オーダーが多いですね。
なので今は、泉州バーク堆肥、花と野菜の土、イチゴの土。大きくはこの3種類です。

作り方は、どれも先ほどの方法と同じなんでしょうか。

発酵させるのはバーク堆肥だけで、花と野菜の土とイチゴの土は、用途に合わせて土を配合するイメージです。その配合の中にバーク堆肥も入ってるっていう形です。

どこで買えますか?

泉州バーク堆肥は、JA大阪泉州さんで扱ってくれてます。あとは農家さんに直接販売もしてますし、色々な公園でも使ってもらってます。花と野菜の土は、泉州地域のホームセンターや野菜の直売所に置かせてもらってますね。イチゴの土は農家さんへの直接販売で、農家さんに合わせたレシピや配合で作ってます。和歌山と奈良の取引先が多いですね。

作業中の様子。材料を砕くために機械に入れている。作業中の様子。材料を砕くために機械に入れている。

堆肥づくり体験はいつでもできるんですか?

時期によって堆肥の作業がない時があったり、人員や他の作業との兼ね合いもあるんで、体験できるときと、できないときはありますね。 関西のこの辺やと前後二期作なんですね。4月から春夏の野菜をどんどん植え出すから、堆肥の発注は2月〜3月が多い。これが堆肥のピークになります。

体験ではどういう作業をするんでしょうか。

堆肥を袋に詰める機械が中心ですね。あとは、ちょっと慣れてきて乗りたいよっていう子がおったら、横につきながらショベルの作業をしてもらったり。体験を通して土って大事なんですねって言ってもらえたら嬉しいなって思います。大変ですねっていう正直な感想の方が多いけど(笑)

画面右の銀色の部分に土を入れると、自動的に袋詰めをしてくれる機械。画面右の銀色の部分に土を入れると、自動的に袋詰めをしてくれる機械。

確かに生産や販売と比べると華やかではないかも…?

僕らも自分たちで野菜作ってて、やっぱりこの領域に踏み込んだからこそ見えて来たもんってたくさんある。今まで「野菜」に当たってきたスポットライトが「土と野菜」に変わる瞬間というか…。 農業やってみたい人たちのスポットライトって、どうやっても最初は野菜やと思うんです。でもそれが、のめり込めばのめり込むほど、たぶん土になっていく。だから堆肥っていうのは、僕らとしては農業の一部なんかなって。

そう思うと、やって初めてわかる面白さがあるんですね。

6次産業って言葉の中には、生産・加工・販売しか入ってない。じゃあ堆肥はなんなのってなったら、「0次産業」やなって思うんです。1次産業の根元を支える0次産業。これって農業ってものの中でもすごい楽しいよなって。だから僕らは、堆肥も足した上で6次産業だっていうスタンスを感覚としては持ってる。
農業に興味ある子でも、なかなか堆肥に興味あるんで体験したいですっていうのはあんまりないと思うけど、野菜を作るためには土が大切なんだってこととか、こだわってやってんねんよっていうのが、体験に来た人に伝わったらいいかなと思いますね。

泉州バーク堆肥と花と野菜の土

奥が深くておもしろい堆肥づくり。まずはその一端を、少しのぞきに来てみませんか?体験は随時募集しているので、お気軽にご連絡ください!